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16:house-tg ~FLOATING BOX

多様な条件、多様な希望
2006年の夏、弊社に1通のメールが届いた。「土地を所有しているが、そこに住宅が計画できるものか?」という問い合わせである。ちょうど、OT邸のオープンハウスを開催していた時期であったため、そちらをご案内した後に近くの喫茶店で詳細を伺った。建設場所は静岡市駿河区 駿河湾を見おろす高台である。東に斜面を背負って造成された土地で平坦な部分が少なく、住宅部分と駐車スペース1台分の間には擁壁によって段差がつけられており、その先は水路ごしに道路に接している・・・そんな土地である。ここで外部環境に求められるのは、複数台の車の乗り入れが容易にできること、キャンピングカー(車高2800mm)が駐車できること、傾斜地上部にアクセスできること、南側に将来テラスを作るためのオープンスペースを残すこと・・・などであった。

空間思考  スキップフロア キャンティレバー ピロティ
敷地面積は100坪以上と広い。だが、土地形状が平面的にも高さ的に複雑なため建設可能なスペースは限られている。そこで駆使されるのが立体的な空間思考である。まず、エントリーは地階からと考えた。これは、最下層のスタジオのフロアを駐車スペースの高さに近づけることで、宅地地盤より1メートルほど地下に埋もれるため、法規上地階扱いとなることによる。1階はLDKとなっている。ここには50インチ超のテレビの設置と液晶プロジェクターの画像投影が求められた。ホームシアターで考慮せねばならないのが、光と音の環境である。ここでは西側壁面に開口部を設置せず、そこをプロジェクターの投影面とした。光と風は上部4箇所のトップライトでコントロールしている(液晶テレビは南面設置)。
音環境は5.1チャンネル対応の配線を行った。投影面は一般リビングエリアから1.2メートル上がったアイランドキッチン上となっているが、このスペースの床が高いのは理由がある。キャンピングカーの駐車スペースを確保するための思考だ。キャンピングカーの車高は一般車よりも1メートルほど高いため、通常の軒下空間には入らない。そこで、敷地の有効利用のために擁壁からせり出したヴォリュームはキャンティレバー(片持ち梁)によって吊り上げられ、通常1階フロアよりアップしているのだ。これは・・・そう、「スキップフロア」を外部空間にも応用したキャンティレバーのピロティである。もちろん、構造は地下1層=鉄筋コンクリート造、地上2層=鉄骨造という構成だ。

やわらかなスペース規定
計画段階からわかっている事もあるし、住んでみないとわからない事もある。今回はクライアント(お客様)とともに「このスペースで何ができるか? どこまでの事ができるか?」というイマジネーションを何度も何度も可能な限り膨らませてみた。何百通という電子メールの往復とともに・・・。その結果、得られたのが2階吹抜まわりの6連引戸であり、ロフトであり、スキップフロアである。また、音楽演奏用の半地下空間のスタジオ、黒タタミの居室、黒いカウンターと強化ガラスで構成された明るいバスルームもこの建物の特徴をよく示している。これらデザインによって空間は時に分節化され、時に一体化する・・・「フレキシビリティ(柔軟性・適応性)の高い場」=やわらかなスペース規定というコンセプトの結実が、ここにある。今後、南庭には芳醇なオープンスペース構築の計画も予定されている。全感覚的に愉しむ住宅での生活はスタートしたばかりだ。

作品名 house-tg
構造 鉄筋コンクリート+鉄骨造
ジャンル 戸建住宅
予算帯 3,000万~4,200万
建築の形体 新築
竣工年 2007年
所在地 静岡県
構造設計 久保田正一建築研究所
ロケーション 郊外
施工者 久保田建設株式会社

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